ペアガラス(複層ガラス)で冬は断熱・結露防止、夏は遮熱で快適に

結露の原因は、空気が冷やされ、余った水蒸気が水に戻ることです。特に窓ガラスは外気に触れているので冷たくなり、結露が一番起こりやすい場所です。
(参考記事→ 結露する面は「冷たい」 – メカニズムが解れば対策ができる

その結露を防止する対策のひとつが「ペアガラス」です。冬はもちろん、夏でも暑さを防ぐ重要な建具です。

ペアガラスについて

ペアガラスとは

“pair glass”…「ペアグラス」と読むと、二つ並んだお揃いのグラスを思い浮かべますが、ここでは「ペアガラス」と読んで下さい。

ペアガラス

ペアガラスとは、ペアになったガラスをスペーサーで挟み、その間に中空層を持ったものです。「二重ガラス・複層ガラス」とも呼ばれます。さらに、ガラスを三枚使って中間層を二つ持った製品もあり、「三重ガラス・トリプルガラス」などと呼んでいます。これも仲間なので、複層ガラスと総称した方が分かりやすいかも知れません。

実は「ペアガラス」というのはAGC旭硝子の登録商標なのですが、現在は一般的に浸透し、他のメーカーでもペアガラスと呼んでいます。その意味でも厳密には複層ガラスが正解ですね。

最も多く普及しているペアガラスは、2枚の板ガラス(厚さは3㎜)の間を6㎜にして、その間に乾燥した空気を注入しています。

熱の伝わり方

熱の伝わり方には「伝導・対流・放射」の三つがあります。複層ガラスでいえば下図のように熱が移動します。(この図は、冬に室内の熱が外に逃げていく例です)

ペアガラスの熱の伝わり方
形態特徴
伝導熱を持っている物体が、接触している物体に拡散する現象。
暖かい空気がガラスに触れるて温め、その裏ではガラスが空気を温める。
熱の伝わりやすさ(熱伝導率)は一般的に「固体>液体>気体」の順。
対流液体や気体など流体で生じる熱の伝わり方。
ガラスで温められた空気が軽くなって上昇し、反対側の空気が下降する。
複層ガラスでは上記の伝導の結果、中空層の中で発生する。
放射電磁波(近赤外線・遠赤外線)による熱の伝わり方。
熱をもった物体からは必ず赤外線が生じ、空気中でも真空中でも伝わる。
なお近赤外線は物体を透過し、遠赤外線はガラスに吸収され熱に変わる。

寒い地方で見られる「二重窓」。上記のうち伝導を防ぐ素晴らしい知恵でした。しかし、対流や放射によって逃げてゆく熱は防げません。初期に開発された複層ガラスも同じでした。その後、様々な技術が開発され、現在では素晴らしく性能が向上しています。その仕組みを見ていきましょう。

なお、上図に示した割合は、初期の複層ガラスでの熱が逃げる割合です。

複層ガラスの中空層における熱移動は、 『放射』による熱移動が6割強を占めています。
(残りの4割弱は、『対流』で移動します)

AGC ガラスの豆知識 Vo.3

複層ガラスの三大特徴

中空層=熱伝導を抑える

まずは中空層。二枚のガラスで密閉した空間を断熱材にして熱の伝導を抑えています。その中空層の中身は、以下のものがあります。

内容物特徴
乾燥空気空気の熱伝導率は約0.02 W/mKと非常に低い値(ガラスの約30分の1)
※乾燥させているのは、中間層の内部で結露するのを防ぐため
断熱ガス空気より熱を通しにくい気体を入れ、断熱効果を高める(空気の1.5倍)
※アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス などすべて安全なガス
高性能なので中空層を薄くでき、ガラス全体を薄くすることが出来る
真空中身を真空にしたもの(詳細は後述)

通常の断熱材は厚いほど効果は高いのですが、気体の場合は対流によって熱が伝わるので、あまり広くしても効果は上がりません。中空層の厚みは 12ミリまでが一般的です。

また中空層はスペーサーで密閉していますが、これが破損して空気が漏れてしまうと断熱効果が著しく下がってしまいます。修理は出来ず、新しいガラスと交換する必要があります。

Low-Eガラス=熱放射を抑える

Low-E は “Low Emissivity”(ロー エミシビティー)の略で、「低放射」という意味です。ガラスの表面に、酸化スズや銀などの透明な特殊金属膜(銀、酸化亜鉛、酸化スズなど)をコーティングしたものを言います。金属膜という一層が加わるので、まさに複層ガラスですね。

Low-Eガラス

この金属膜は赤外線をカットし、ガラスでは抑えられなかった熱の放射を抑えます。夏の太陽の日射はもちろんですが、冬の温かい部屋からも波長の長い赤外線が放射されています。「外線」の名の通り目には見えませんが、天井や壁からも放射されています。 赤外線を反射してカットすることで、室内の熱が室外に逃げるのを抑える働きをします。Low-E金属膜もごく薄くて目には見えないのですが、このおかげで寒い冬でも暖かく快適な室内が得られるのです。

真空ガラス=対流が起きない + α

そもそもの開発の目的は、高断熱です。文字通り中空層を真空にしたもので、魔法瓶と同じ仕組みです。真空は熱の伝導もゼロ。アイディアは100年以上前にあったのですが、研究と工夫の末にやっと登場した製品でした。その断熱性はピカイチです。

それとは別に、対流をなくする効果もあります。中空層に気体(空気やガス)があると、どうしても対流が起こってしまいます。真空ガラスでは気体がないので対流はゼロ。断熱性はさらに上がります。放射を防ぐLow-Eガラスと組み合わせることで、最強性能の断熱ガラスなのです。

それに加え、ガラスが薄いという利点も重要です。というのも、真空は熱の伝導がないので、中空層の幅は非常に狭くても構いません。(実際の製品では0.2mmほど)この結果、他の複層ガラスは全体の厚さが12mmほどですが、真空ガラスは6.2mmという薄さになっています。
普通のサッシはガラス溝幅が9mm程度なので、それより厚いガラスを入れる事ができません。複層ガラス用のサッシへ交換するか、アタッチメントという部品を使う必要があります。真空ガラスは従来のサッシでもそのまま交換することが出来るのです。

もうひとつの特徴が防音です。真空中は音が伝わらないので、薄くても遮音性能に優れています。
(後述するように中空層に気体があると、防音効果はあまり見込まれません)

メリット

断熱効果、結露防止

これが開発の目的ですから、言うまでもありません。

複層ガラスは断熱を向上するためのガラス。冬は室内の熱を逃さず、夏は室外からの熱をカットします。特に冬期はガラスが冷たくならないので、結露を防止します。

デメリット

今の窓に取付られないことも

気体(空気やガス)が封入された複層ガラスは中空層が6mm、全体の厚さは12mmになります。普通のサッシはガラスを入れる溝幅は9mm程度なので、このままでは入りません。専用のサッシに交換するか、「アタッチメント」という補助部品を使う必要があります。

アタッチメントは、ガラスのまわりに取り付けてサッシの溝に入るようにするものです。しかし、以下のような問題があります。
・アタッチメントの幅の分、ガラスが小さくなる
・取り付けられるガラスの厚みは、12mmまで
・アタッチメント部材(アルミ製)の結露と放射冷却
・網戸や雨戸のレールにはみだしてしまう

※真空ガラスであれば、ガラスが薄くアタッチメントが不要なので上記の不具合は解消されます。

遮音性は二倍ではない

ガラスが二重に入っていて中空層もあるので、防音効果は二倍以上と思われるかも知れません。が、実はそれほどでもないのです。

中空層が気体だと音は伝わります。2枚のガラスと気体が共鳴する事で「コインシデンス現象」が起こるのです。共鳴現象によって低音が伝わるようです。

複層ガラスのような二重構造の場合には、単板ガラス同士が中空層の空気をバネにして共鳴が生じ、低音域において、透過損失の低下する周波数域があります。
以上から、一般的なガラスの遮音特性は、
  1.高い周波数の音ほど遮る、また、厚いガラスほど音を遮る … 質量則
 2.特定の周波数の音が抜ける(板厚によって抜ける周波数が違う)… コインシデンス効果
 3.複層ガラスでは低音域の音が抜ける(2枚のガラスの共鳴が原因)… 低音域共鳴透過
と言えることが分かります。
騒音は、色々な周波数の音が混ざっている場合が大半ですが、それぞれの周波数特性に適したガラスを選択することが、遮音対策のポイントと言えるでしょう。

AGC株式会社 ガラスの豆知識 (遮音と窓ガラス(2) – 音その2)

※真空ガラスは音を伝えないので共鳴現象はなく、遮音性は優れています。

アルミの部分に結露が発生

結露を防ぐために複層ガラスに交換しても、盲点は「アルミ」部分です。
サッシのフレームやアタッチメント部分がアルミ製だと、そこで結露が起こってしまいます。アルミは物質の中でも熱伝導率がトップ。外気の寒さをそのまま伝えます。冷たくなると結露が起こってしまいます。

内部に結露も

中空層を持つ複層ガラスは、結露対策にとても有効です。しかし、その中空層の内部に結露が起こってしまうことがあります。
中空層は密閉されていますが、ガラスにヒビが入ったりスペーサー部分に隙間ができると空気が入ってしまいます。こうなるとガラス内部が曇ったり結露したりします。修理は出来ないので、交換するしかありません。

まとめ

1枚ガラスを複層ガラスに交換すれば、断熱効果は格段に上がります。その中でも一番優秀なのは真空ガラス。お値段は少々しますが、その後の光熱費を考えると快適な住まいの選択肢かもしれませんね。

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