Low-Eガラスはペアガラス(複層ガラス)の熱放射を防ぎ、更に断熱効果を高める

ペアガラス(複層ガラス)は結露を防ぐ効果が大きいのですが、同じペアガラス(複層ガラス)でも種類はあります。そのうちの、「Low-Eガラス」について、詳しく述べていきます。
(参考記事→ ペアガラス(複層ガラス)で冬は断熱・結露防止、夏は遮熱で快適に

ペアガラスについて

ペアグラスについて、簡単に説明しておきます。構造は以下のとおりです。

ペアガラス

ガラスに挟まれた空間が「中空層」で、これが熱の伝導を防いでいます。しかし熱は、その他にも伝わり方があります。

ペアガラスの熱の伝わり方

中空層だけでは残念なことに、放射は防げません。放射によって実に6割強の熱が逃げていってしまいます。これを解決するのが「Low-Eガラス」です。

複層ガラスの中空層における熱移動は、 『放射』による熱移動が6割強を占めています。
(残りの4割弱は、『対流』で移動します)

AGC ガラスの豆知識 Vo.3

Low-Eガラス=放射を抑える

Low-E は “Low Emissivity”(ロー エミシビティー)の略で、「低放射」という意味です。ガラスの表面に、酸化スズや銀などの透明な特殊金属膜(銀、酸化亜鉛、酸化スズなど)をコーティングしたものを言います。

Low-Eガラス

Low-E金属膜は赤外線をカットし、中空層では抑えられなかった熱の放射を抑えます。夏の太陽の日射はもちろんですが、冬の温かい部屋からも波長の長い赤外線が放射されています。目には見えませんが、天井や壁からも放射されています。 これを反射することで、室内の熱が外に逃げるのを抑えてくれます。
Low-E金属膜はごく薄く目には見えないのですが、大切な働きをしてくれます。真夏の日射をさえぎり、寒い冬でも暖かく快適な室温を逃しません。

金属膜のタイプと用途

その金属膜ですが、作り方によって光の波長ごとに透過・反射の性質をかえることができます。Low-Eガラスに使用される金属膜には二種類あり、赤外線を通すか通さない(反射する)かです。

近赤外線の主な発生源は太陽です。太陽は遠いところにありますが、近赤外線を多く発生して地球に届きます。夏の太陽光が暑いのは近赤外線の影響です。これに対し赤外線は熱を持った物体から発生し、調理器具などで利用されています。芯から温まるなどと言われますね。
なおLow-E金属膜は、いずれも遠赤外線は反射します。

タイプ特徴
断熱タイプ近赤外線を通すタイプ。
「日射取得型」とも言われ、太陽光の暖かさを取り込める。
遠赤外線を反射するので、室内の暖かさを外に逃がさない高断熱性能を実現。
は室内の暖かさを外に逃がさない高断熱性能を実現し、暖房効果を高める。
遮熱タイプ近赤外線を反射するタイプ。
「日射遮蔽型」とも言われ、太陽光の暑さを遮る。
は明るさを保ちつつ、日射の暑さを防ぎ冷房効果が高まる。
高断熱タイプと同様に遠赤外線を反射し、高断熱性能を持ち合わせる。

例えばリビングの南向きの窓は、夏の暑い陽射しを避け、冬は少しでも取り込みたい。この場合、「断熱タイプ」にして冬の日射取得を優先します。
また、強烈な陽射しが差し込む西側・東側の窓には、日射熱をカットする「遮熱タイプ」が適しています。

設置側の種類と用途

また、金属膜がガラスのどちらにコーティングされるかによっても、機能や目的が変わります。

Low-Eガラス
設置側特徴
室内側太陽光の近赤外線は、中空層をほぼそのまま通貨して金属膜に届きます。
熱を持った金属膜がガラスに伝わり、室内に届いてしまいます。
しかし金属膜は、室内側の放射熱(遠赤外線)が屋外に漏れるのを低減します。
室内の温度低下を防ぐこととなり、は建物の断熱効果を高めてくれます。
室外側逆に室外にあると、中空層に入る前に太陽光の近赤外線を防いでくれます。
たとえ金属膜が熱を持っても中空層がそれを遮り、侵入する熱を防ぎます。
の強い日射を浴びる窓には、こちらが適しています。
また、上記と同様に遠赤外線の反射率は高く高断熱性能です。

基本的にLow-e膜は赤外線の通過を防ぐ役割があるので、温度の高い場所に面する側に設置することで効果を発揮します。

両側に金属膜を設置したら

そんなLow-e金属膜を両側に貼ったら、倍の断熱を実現できるのでしょうか?
残念ながら、片面だけに比べて少ししか変わりません。Low-e膜は片面だけで十分な断熱性能を発揮してくれるのです。

Low-e膜は放射熱を大幅にカットしてくれますが、残る対流による熱移動は防げません。ですから、単純なペヤガラスから片側Low-Eガラスの時のような、劇的な断熱性向上は望めあいのです。
製造コストからの効果を考えると、Low-E金属膜は片側だけで十分なのです。

使い分け

ただし、金属膜のコーティング面はどちらか一方だけです。(両方の製品はあります)
ですから、同じ窓で裏返すという使い分けはできません。そこで、建物の窓に入る太陽光の位置や方向・日射量によって選択してください。

以上のことから考えると、夏は日射熱の近赤外線を遮る「遮熱タイプ」、冬は逆に近赤外線を取り込みつつ室内の熱の漏れを抑止する「断熱タイプ」が適しています。

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