冬の寒い日に窓ガラスにできる結露、冷たい飲み物のグラスにつく水滴…。その原因はガラスが冷たくなる事です。真夏の雨の日、ガンガンに冷房すると窓ガラスの外側も同じように結露します。
それでは、そのメカニズムを見ていきましょう。
理科のお話
水の三態変化
「水」といえば液体ですね。
水を冷凍庫に入れ、0℃ 以下に冷やせば「氷」になり、固体に変わります。逆にヤカンに入れて、100℃ 以上に熱すると「水蒸気」という気体になって飛んでいってしまいます。
このように水は温度によって変化しますが、「水の三態変化」といって小学校で習うようです。
(私はその言葉に記憶はありませんが…)
湯気は液体
ところで「水蒸気」と「湯気」という言葉があります。同じ「気」の文字がつくので同じもの(気体)として思われがちですが、正確には違います。
お湯を沸かしているヤカンをよく見て下さい。口のすぐ上は透明で、その少し上から白くなっています。透明の部分が「水蒸気」、白い部分が「湯気」です。その違いは何でしょうか?
「水」は無色透明です。見えていると思われますが、光の反射や屈折率の違いなどで境目が見えているだけです。水族館の水槽を正面から見ると、何も無いように見えます。その「水」が気体になった「水蒸気」も同じく無色透明で、見えません。あまりに小さいので顕微鏡でも見えません。
「水蒸気」はヤカンの口から勢いよく飛び出したあと、まわりの空気に触れて冷やされ「水」に戻ります。とても小さい水滴なので直接は見えないのですが、光を反射して白い煙のように見えます。雲や霧と同じですね。つまり湯気は液体なのです。
その湯気ですが、立ち上ったあと消えてしまいます。それは、水は蒸発するからです。バケツに貯めておいた水が減るのも、洗濯物が乾くのも全て蒸発です。
気化には沸騰と蒸発がある
液体が気体に変わることを「気化」と言いますが、その現象には二通りあります。
・蒸発 … 液体の表面から気化
・沸騰 … 液体の内部からも気化
ヤカンの中でグツグツ泡を立てているのが沸騰、洗濯物が乾いたり湯気が消えてしまうのが蒸発です。沸騰は100℃ になれば必ず起こりますが、蒸発は100℃ になならなくても起こります。なぜでしょう?
科学のお話
水の三態は分子の運動量の差
水の分子を元素記号で表すと、ご存知の通り「H2O」ですね。
その分子ですが、水に限らす細かく動いています。動き方は三態によって違います。
・氷(固体)… 分子はあまり動かず、規則正しく並んでいる
・水(液体)… 近くの分子の影響は受けるが、自由に動いている
・水蒸気(気体)…激しく自由に動き回り、分子同士の距離も離れている
熱 = 分子の運動の激しさ
このように、温度によって分子の動き方は違います。しかし正確に言うと、分子の運動の激しさのことを「熱」と呼びます。(運動エネルギー ≒ 熱エネルギー)
ですから水に熱を加えると、分子の運動が激しくなって沸騰します。そして冷やすと分子が運動できなくなって氷になるのです。また、同じ水でも温度が高いほど分子の運動量は大きくなります。(正確には、運動エネルギーが大きいほど熱エネルギーが大きく、結果的に温度が高い)
蒸発とは
水の状態でも分子は動いています。中には高いエネルギーを持った分子もあります。水面近くではその勢いで空中に飛び出していくのです。これが「蒸発」です。温度が高いほど分子運動も盛んなので、蒸発も盛んになります。
なお、水中深くの分子も動いていますが、別の分子に衝突してし飛び出すことはできません。だから蒸発は表面からしか起こらないのです。
ここで有り難いのが「気化熱」です。分子が勝手に飛び出すのですが、気化するには熱エネルギーが必要なので周りの熱を奪うのです。汗が乾く時に涼しくなるのはこのおかげです。
一方、沸騰は十分な運動エネルギーを持っているので、水中であっても気化します。
(注)100℃ で沸騰するのは地表での場合です。富士山の山頂では気圧が低いので90℃ 前後で沸騰します。泡になれる条件は、周りの圧力(=気圧)を超えた時だからです。
湿度のお話
蒸発には湿度も影響
気温が高いと蒸発は盛んになるので、夏は洗濯物がよく乾きます。しかし同じ夏でも、雨の日など湿度が高いと、洗濯物は乾きにくくなります。空気中の水蒸気が、飛び出す水蒸気を押さえつけて 蒸発が遅くなるからです。 蒸発には温度と湿度の両方が影響します。
湿度について
その「湿度」ですが、「空気中の水蒸気の割合」というところまでは想像できますね。
0%というのは文字通り、空気中に水蒸気が全く無い状態です。では、100%とは空間が全て水蒸気で満たされている事でしょうか?
そもそも、何に対して何の割合なのでしょうか?
その答えは「飽和水蒸気量に対する水蒸気量」です。
\[湿度(%)= \frac{1m³の空気に含まれる水蒸気の質量}{その空気の温度の飽和水蒸気量}×100\]飽和水蒸気量
いきなり難しそうな話になりますが、「空気が水蒸気をこれ以上含めない量」の事です。計算式も、これまた難しそうですが以下になります。
温度 t℃ における飽和水蒸気量 a(t) は
\[a(t)= 217×\frac{e(t)}{t+273.15}\] \[e(t)= 6.1078×10^{(\frac{ 7.5t }{ t+237.3 })}\]結果だけを載せましょう。
例えば気温が24℃ の場合、飽和水蒸気量は21.8 (g/㎥) です。
空気中に水蒸気が10.9 (g/㎥) 含まれていれば、湿度=50% となります。
(注)この計算方式は「相対湿度」と言います。「絶対湿度」というものもありますが、実用的には使いません。
結露のお話
水蒸気が余るから
やっと結露の話になりました。
先程の条件から気温が10℃ に下がると、飽和水蒸気量は9.4 (g/㎥) になります。もともと、10.9 (g/㎥) の水蒸気が含まれていたので、その差の1.5 (g/㎥) の水蒸気が余ります。余った水蒸気は、空気中に存在することができないので水に戻ってしまい、結露するのです。
水蒸気の発生源
自然界では海や河川・地表などから水が蒸発し、大気に適度な湿度を供給しています。湿度は動物や植物にとって不可欠なものです。もし湿度が0%のカラカラの世界になると、あっと言う間に体内から水分が蒸発してしまいます。脱水状態になり、生命は維持できません。
一方、家庭の中でも水蒸気は発生します。料理をする時の沸騰、お風呂の湯気など様々です。
鍋物をすると蒸し暑く感じますね。温度も上がりますが、外気に加えて水蒸気がプラスされるので室内の湿度はとても高くなります。
結露を防ぐには
結論から言うと、空気中の水蒸気が飽和水蒸気量を超えないようにすれば、結露は起きません。そのためには、温度と湿度のコントロールが大切です。
冷たくしないこと
先程の例でえ計算すると、空気が12.4℃ 以上であれば水蒸気が余ることはなく、結露は起きません。でも室内をこの温度に保つとなると、寒くて快適ではありませんね。心配ご無用!「ガラスの内側面」をこの温度に保てばいいのです。ここに触れる空気が、それ以下に冷たくなることはありません。
ヒーターなどでガラスを温める方法もありますが、ガラス自体の断熱性を高める方法もあります。二重ガラス・ペアガラスなどがオススメ。外気が0℃ 以下に下がっても、ガラス内側の温度は保てます。
湿度を上げない、下げる
しかし、元々の室温が24℃ でも湿度が100% だったとしたら、結露が起こってしまいます。水蒸気が21.8 (g/㎥) もあるので、ガラス面を12.4℃ に保っても10.9 (g/㎥) の水蒸気が余ってしまうのです。従って、室内の湿度を上げない事も対策のひとつです。
そして湿度が上がってしまったら、下げましょう。除湿機も有効ですが、窓を開けて換気するのが手っ取り早いです。冷たい外気は入ってきますが、室内の壁・床・天井などが熱を保っていますので、 すぐに元の室温に戻ります。快適な湿度は40%~60%くらいと言われていますので、この湿度に保ちましょう。
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